私が日本人に生まれて本当によかったとしみじみ感じるのは、いつも、
「男はつらいよ」を観る時です。
いつも観る映画は洋画中心なのですが、邦画でも山田洋二監督の作品は頻繁に観ています。
「男はつらいよ」を初めて観たのは、既に渥美清さんが亡くなられた後のこと。
それまで母にお正月には「男はつらいよ」を観るというのが定番だった、などという話を何度か聞かされてはいたものの、なんだか古臭い感じがまだ高校生の私などには魅力に思えませんでした。
しかし、ある日何かのきっかけで観て、何でもっと早くこの作品の素晴らしさに気づかなかったんだろう!と後悔するほど感動してしまったのです。
私にはシリーズ全編を通じて、そんなにお涙頂戴のシーンではなくともなぜか自然に涙が出てきてしまうシーンが必ずといっていいほどあります。
寅さんの、すべてを分かっている上で少しあきらめの混ざったような
そんな表情、つぶやくように吐き出される優しさのあふれる言葉の数々・・私もこんな人に出会いたい、と何度も思ったものです。
あからさまな優しさではない、さりげない思いやりや気遣いの言葉。
この寅さんを演じる渥美清さんの人柄もそれと重なるものがなければ、絶対にこの深みは生まれないだろうといつも感じます。
私がお気に入りとしているのは第30作目の「花も嵐も寅次郎」。
田中裕子になった気分で、寅さんに甘えてみたいなーといつも感情移入してしまいます。
この作品中で、田中裕子が、沢田研二に好かれているのは分かるけど、大事な話をなかなか切り出せないような男と結婚するなんて、この先が不安だと寅さんに打ち明けたときのセリフ。
「今度あの娘に会ったら、こんな話しよう、あんな話もしよう。そう思ってね、ウチを出るんだ。いざその娘の前に座ると、全部忘れちゃうんだね。で、馬鹿みたいに黙りこくってんだよ。そんなてめぇの姿が情けなくって、こう、涙がこぼれそうになるんだよ。女に惚れてる男の気持ちって、そんなもんなんだぞ」
縁側でこう優しく語り掛ける寅さんの姿が目に浮かびます。
それともうひとつ、「男はつらいよ」の作中には、正しく美しい日本語があふれていると思うのです。
「男はつらいよ」で寅さんが啖呵を切ったり暴言を吐いたりするシーンは必ずあるものの、全編において”日本語の美しさ”が散りばめられているなあと私はいつも感じます。
何をもって”正しい””美しい”と表すかは、その使われ方もしくは使う人によるもの、にかかってくるのではないでしょうか?
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「花も嵐も寅次郎」より |
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