【アメリカン・ビューティー】(1999/アメリカ/117分)
これは、コメディー映画の中でも、”ブラック”なコメディー映画となります。
一般的な評価もとても高い作品ですが、本当に、面白くて細かな部分まで緻密に計算された名作です。
監督は、本作が初監督となるイギリスの演出家、サム・メンデス。
(今はイギリスの実力派女優ケイト・ウィンスレットの旦那様でも有名)
主演はクセのある難しい役柄をいつも見事に演じきる実力派俳優
ケビン・スペイシー。
今回は普通のおじさんの役で、アカデミー主演男優賞を獲得しました。
(↓*一部ネタバレあり↓)
舞台は、アメリカ郊外の平凡な中流サラリーマン家庭。
住宅ローンを抱える主人公レスターは、突如リストラに遭ってしまいます。
そのレスターが、ある日突然娘の友人に熱烈な恋をしてしまうことから、
段々となにかが変わり始めていくのです。
レスターの頭にうかぶのは、自分を妖しく誘惑する彼女の妄想ばかり・・・。その妄想は次第にエスカレートしていきます。
今までの出演作品ではキャリア・ウーマンを演じることの多かったアネット・ベニングが、上昇志向にとりつかれた妻の見苦しさと痛々しさを見事に演じる演技も光っています。
家庭の内情はとても人に見せられるような状態ではないほどぼろぼろ
なのにも関わらず、自分の理想とするイメージを崩したくないばかりに必死に庭のバラの手入れをする妻。その様子を冷ややかに見つめる夫と娘。
売れない家を磨き上げ、作り笑顔で接客し、キャリアウーマンのイメージを崩さないよう努力する彼女も、次第にイメージだけではやっていけず、不倫に走ってしまいます。
娘の友人に入れあげる父、浮気に夢中の妻、隣家のオタク青年に恋する無気力な娘・・。
日常で誰もが無意識にしている”我慢”。それを放棄し、それぞれが自分の幸せに走り始めた時に起こる”何か”。
倦怠が愛を上回り、体裁が本音を覆し、理想を求めるが故に本末転倒の結果を招く悲しさ。
普通に暮らすことにどれだけのストレスが満ちているか、平凡に見える人々に、どれだけの非日常が隠されているのか?
そんな疑問を投げかけ、イギリス人監督が一歩引いた視点でアメリカのダークサイドをブラックユーモアたっぷりに描いています。
ちなみに、この作品全体に圧倒的な視覚効果をもたらしているあの
「バラ」は、その名も”アメリカン・ビューティー”という品種のアメリカ国産のバラ。
なかなかこんなに面白い作品にはめぐりあえないなぁとちょっと感動してしまいます。
おかしい、でも悲しい。そんな感情がこみ上げる名作です。
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